実物資産の視点:日銀の「利上げ」後に円安が加速する理由 #コモディティ・スーパーサイクル

「利上げ」でも円安が続く市場の奇妙な風景

先日、日本の金融当局が政策金利を調整したにもかかわらず、為替市場では円安基調が維持されるという、一見すると奇妙な状況が続いています。ロイターの報道が示すように、テクノロジー株の上昇に牽引されたリスクオンムードと相まって、円は買い戻されるどころか、弱含んでいます。この現象は、単なる金利差の問題ではなく、私たちが追っている「実物資産のスーパーサイクル」の観点から見ると、通貨の価値転換点を示している可能性があります。

通貨の信認と実物資産価格の相関関係

我々コモディティトレーダーが注目するのは、金利そのものではなく、金利調整に対する市場の反応、そしてそれが通貨の「実質的な価値」にどう影響するかです。

コモディティ・インフレが円安を構造化する

日本のような資源輸入国にとって、円安は輸入物価を直ちに押し上げます。原油や天然ガス、穀物といった主要コモディティがすでに高値圏にある中で円安が進行すれば、国内のコストプッシュ型インフレは長期化するリスクが高まります。これは、金融引き締めの効果が物価高騰に追いつかない状態を示唆しており、円という通貨の将来的な購買力に対する市場の懸念を強めていると見られます。

実物資産のスーパーサイクルとは、数十年にわたる長期的な需給の偏りによってコモディティ価格が大きく上昇する波のことです。現在の市場環境は、デフレ期に投資が抑制されたことによる供給制約と、世界的な脱炭素化投資による構造変化が重なり、このサイクルが継続する可能性を示唆していると見られます。

ゴールドが示す「インフレヘッジ」需要

特に、金(ゴールド)の価格動向は、通貨の信認のバロメーターです。円安が進行し、国内インフレ懸念が強まる局面では、円建てで見た金の価値は上昇しやすくなります。金利が上がっても円が売られ続けるということは、投資家が名目金利の上昇よりも、インフレによる実質的な価値目減りリスクを重視している証拠と捉えることができます。金価格が堅調に推移していることは、世界的なインフレの波が容易に収束しない可能性を示唆していると見られます。

スーパーサイクルの転換点を見極める

現在の市場は、デフレ的な停滞からインフレ的な成長への転換期にある可能性があります。テクノロジー株の上昇はリスクオンのシグナルですが、同時に、構造的なインフレ圧力が継続する中で、リスク回避資産であるコモディティも同時に買われている状況です。

今後、原油価格が再び高騰するか、あるいは主要な鉱物資源の供給制約が顕在化すれば、世界的な金融引き締め圧力はさらに強まる可能性があります。トレーダーとして我々は、金利動向だけでなく、中東情勢やグローバルな在庫レベルといった実需の指標から、次のインフレの波とサイクルの転換点を見極める必要があるでしょう。

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モノの値段が上がる時代、現金だけ持っているのはリスクです。金、原油、農産物など、実物資産への投資手段を持っておくのが賢い防衛策です。


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