原油高は金利サイクルの前兆か?為替を動かす「見えざる手」の正体

我々マクロ経済学者が資産市場を分析する際、常に確認しなければならないのは、その変動の真のドライバーがどこにあるかということです。Investopediaの記事が指摘するように、原油価格と通貨価値の間には明確な相関が存在します。しかし、これは原因ではなく、あくまで結果です。市場のすべての価格、そして金融の潮目を決定づけるのは、常に金利サイクルなのです。
原油高が起動させる「金融引き締め」の連鎖
原油価格が上昇すると、なぜ特定の通貨が強くなるのか?多くのアナリストは原油輸出国・輸入国の貿易収支に焦点を当てますが、より広範で決定的な要因は、それが生み出すインフレ圧力にあります。
- 原油高はガソリン価格を押し上げ、企業コストを増加させます。
- これはPCE(個人消費支出)デフレーターやCPI(消費者物価指数)といった主要なインフレ指標に直接影響します。
- 中央銀行、特にFRB(連邦準備制度理事会)は、インフレ退治を至上命題としています。
つまり、原油価格の高騰は、FRBがタカ派的な姿勢を強めざるを得ない状況を生み出すのです。金利サイクルの観点から見れば、原油高は「利上げの必要性を高めるシグナル」に他なりません。
金利差拡大こそが為替の命運を握る
ここで登場するのが、我々の信念の核心である「金利」です。原油高がFRBの利上げ観測を強めると、米国の短期金利・長期金利の両方に上昇圧力がかかります。これこそが、原油高局面でドルがしばしば強くなる理由です。
為替レート、例えばドル/円を動かしているのは、原油そのものではなく、日米の金利差です。FRBが利上げサイクルを継続(または再開)する一方、日銀がハト派的な姿勢を維持せざるを得ない場合、金利差は拡大し、結果としてドル高/円安が進行します。
原油価格は、金利サイクルの外部変数として機能しているに過ぎません。市場参加者が原油の動きを追いかける時、彼らが無意識のうちに織り込んでいるのは、「原油価格の変動が金融政策に与える影響」なのです。
利上げサイクルの終わりを見極める重要性
現在の市場の最大の関心事は、FRBが「利上げサイクルを本当に終了させたのか」どうかです。原油価格が再び高騰し、インフレ目標(2%)達成が遠のくようであれば、FRBは再び金利を引き上げるか、少なくとも高金利をより長く維持する(Higher for Longer)というコミットメントを強化せざるを得ません。
我々が注目すべきは、原油の絶対水準ではありません。注視すべきは以下の点です。
- 原油高がサービスインフレや賃金インフレに波及しているか(コア・コアPCEへの影響)。
- FRBメンバーが今後のFOMCで「需給側のインフレリスク」に言及し始めたか。
- 市場が織り込むターミナルレート(最終的な到達金利)が上方修正されたか。
すべては金利サイクルの位相で決まります。高騰するエネルギー価格は、利上げサイクルの終焉を遅らせるシグナルであり、それはそのままドルの強さを維持する根拠となるのです。為替トレーダーは、原油価格のチャートではなく、フェデラルファンド金利の予想分布を常に監視すべきです。
引用元: Google News金利サイクルが転換する時、通貨の価値は大きく揺らぎます。歴史上、常に価値を保ち続けてきた「金」を、毎月コツコツ積み立てておきませんか?
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